免疫チェックポイント阻害剤
immune checkpoint inhibitors
免疫チェックポイント分子「PD-1」の発見でノーベル生理学・医学賞を受賞
2018年ノーベル生理学・医学賞は京都大学特別教授の本庶佑(ほんじょ たすく)氏が受賞されました。
本庶教授は、免疫細胞がガン細胞を攻撃するアクセルだけでなくブレーキもあることを発見し、ガン細胞が免疫細胞にブレーキをかけているメカニズムを解明した功績が認められ、ノーベル賞受賞に至りました。(免疫チェックポイント分子「PD-1」の発見)
そしてこの発見を応用した画期的なガン治療薬が「ニボルマブ(商品名:オプジーボ)」です。
これまでのガン治療薬「抗ガン剤」は、免疫細胞のガン細胞への攻撃力であるアクセルを大きく強めるものでしたが、正常な細胞まで攻撃することによる副作用や、ガン細胞が免疫細胞にブレーキをかけていたこと等から、なかなか良好な治療効果が得られませんでした。
ニボルマブは、ガン細胞が免疫細胞の活動にブレーキをかけることをできなくし、本来の免疫細胞の力を発揮できるようにさせる 「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれる、画期的な新しい切り口のガン治療薬なのです。
2022年6月にドスタルリマブが世界を驚かせた!
ニボルマブ以外に免疫チェックポイント阻害剤はイギリスでも開発されています。
代表されるのが英グラクソ・スミスクライン社の「ドスタルリマブ(商品名:ジェンペルリ)」です。
一流の医療論文サイトである「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に2022年6月5日に掲載された研究結果では、12例の直腸ガンに対してドスタルリマブで治療したところ、全例でガンがすべて消失(完全奏効)し、6ヶ月から25ヶ月間、経過観察されているが再発はみられていない、という衝撃的な内容が掲載されました。
しかし、ドスタルリマブの治療費は1回1万1000ドル(約164万円 ※2023年11月時点 )で3週間おきの投薬を半年間続ける必要があります。
ドスタルリマブやニボルマブといった免疫チェックポイント阻害剤の需要は今後高まることが予想されますが、その莫大な治療費が課題となります。
免疫チェックポイント分子について
免疫細胞は、ガン細胞を攻撃するアクセルがありますが、攻撃を止めてしまうブレーキも存在します。
免疫細胞の一つであるT細胞には「PD-1」というブレーキの役割の受容体が存在します。
一方攻撃を受けるガン細胞は、自らの存続のためにT細胞の攻撃に対抗して、「PD-L1」という分子を出し、この PD-L1がT細胞のPD-1受容体と結合してT細胞の攻撃にブレーキをかけます。
本庶教授はこのメカニズムを解明したのです。
このように免疫にブレーキをかける「PD-L1」や、T細胞のPD-1受容体のことを「免疫チェックポイント分子」と呼びます。(図①参照)
このメカニズムの解明をもとに、「免疫チェックポイント分子」の働きを阻害し、免疫細胞にブレーキがかからないようにブロックする有効成分である「ニボルマブ」や「ドスタルリマブ」 が開発されました。
ブレーキがかからないことで、アクセルが正常に作動し、免疫細胞本来のガン細胞攻撃力が発揮できるようになるのです。
このようなガン治療薬を「免疫チェックポイント阻害剤」と呼びます。(図②参照)。